生涯で一番

久留米の女子中学生が、眉を「整えた」だけで3日間の別室授業という処罰を受けた話が、ネット上で評判になりました。中高では髪型や服装について学校ごと(もしくは地域ごと)の細かい決まりがあり、違反すると処罰されることが屡々問題になります。学校側の言い分は、身だしなみを超えて身なりを気にするのは生活の乱れに繋がる、というのが建前のようです(ポニーテール禁止の正当性は、私には分かりません)。

60年前、都立高校でも制服がありました。自宅では洗濯できない生地だったので、いま思うと新陳代謝の激しい年頃なのに不衛生だったと思います。袖口の白線だけ歯ブラシで擦って洗ったりしました。夏冬の衣更えも気温に関係なく暦で決まっており、しかも上に何か羽織ってはいけなかったので、健康にもよくなかったと思いますが、当時は寒暑に負けてはいけない、という教育でした。それでも、微妙に丈を詰めたり裾を絞ったりする人もいて、でも生徒同士は別段そのことだけで品行を測ったりはしませんでした。パーマは禁止でしたが、年格好に似合わないと思っていたので、不満はありませんでした。

その後、超のつくほど野暮ったい制服の、しかしこれも超のつく女子進学校で半年だけ教えたことがありましたが、授業に行き、教室の扉を開ける瞬間、一斉に彼女たちの顔がこちらを向くと、その美しさにひるみそうになったものです。期待と緊張に満ちた、あの年頃の素顔は、生涯で一番、美しい時。化粧するのは勿体ない。

今は10代でも、商品としての美しさで一世を風靡する人がいる時代。眉を剃ったり描いたりしたくなるのでしょうが、それは後々、いつでもできる。活き活きした素顔の美しさは、誰にも真似られない、その人だけ、この時期だけのものです。

にしても3日間の別室授業とは、生徒の「学ぶ権利」を侵害し、教育基本法違反では。