差別と偏見

看護師の子供が保育を断られた、といった事例が、医療従事者への差別と偏見だとして問題になっています。人権侵害だとか、一所懸命働いている人たちに失礼だといったコメントも見かけました。それは違うんじゃないか、と思います。

保育園の側から考えれば、ウィルスに最も近い現場にいる人と同居している子供は濃厚接触者の可能性が高く、発症していなくても感染していないという保証はない。もし他の子供たちや職員に伝染が始まったらどうすればいいのかという不安、あるいは感染源の分からない感染者が出た時、他の保護者たちに充分な説明ができるかという心配は、当然ではないでしょうか。

いま医療現場では、防疫体制が不十分なままの日々が続いている、と報道されています。マスクも手袋も防護服も足りない。人手も足りず、スタッフは疲弊しているとも言われています。そういう状態を解決しないで、人道主義や「思いやり」で穴埋めしろと言うのは、何の解決にもなりません。PCR検査も抗体検査も、検査キットは不足していないとされているのですから、医療従事者には優先的、定期的に検査を実施し、現場では感染していないことを、明らかにしたらいい。

勿論、罵詈雑言を浴びせかけるなどの行為は論外です。しかし感染しているかどうか分からないまま感謝の気持ちで受け入れようというのは、他人事だから言えることで、ほんとうに隣人や仲間として発言しているのか、怪しいと思います。

保育園の心配は事実であって、差別や偏見ではない。心配の種を取り除くことがまず必要でしょう。可能な方法があるのだから。何より政府は、充分な防疫用医療物資の供給を。検査の結果感染者が多数出て、現場が崩壊するというのなら、話はまた別になります。