ノロウィルス

ノロウィルスが日本でひろく認知されたのは、それほど古いことではありません。たしか19年ほど前、地方で大きな学会が開かれた時(会期中、寒い曇天が続いていました)のこと。私は授業があったので、3日目のバス旅行は参加せずに帰りましたが、後で聞くと、参加者たちの間に激しい下痢症状が出て、隔離病棟に入院した人もあった、という。かかった治療費は学会が払う、という通知が来ました。

夜行列車で帰って授業に出た私も、そう言えば腹具合はよくなかったのですが、現地では海老の刺身やらローストビーフの巻寿司やら、珍しい食材をいろいろ食べたので、どれかに当たったのだろうと思って、1食抜いて治しました(若い頃は胃腸が丈夫で、たいていのことは腹を温めて1食抜けば治ったのです)。

その時私はたまたま会計監査委員だったのですが、年度末の監査の際に、事務局が妙なことを言う。「ちょっと事情があって、大会の後始末にかかったこの金額に関しては、領収書なしで処理した。常任委員会もそれで通った」と。金額はおよそ¥20万、当時の年間予算が¥200万でしたから、予算の1割を領収書なしの支出で黙過してくれ、と言われたら、監査はないも同然です。困っていると、相方の監査委員(日頃は何かと面倒な先輩だった)が、それはおかしい、ときっちり言ってくれて、この時ほど先輩の有難味を感じたことはありません。今思えば、領収書のコピーなら貰えたはずです。

学会が出した弁当は保健所の検査でもOKだったそうで、未だウィルスの仕業とは判っていなかった頃です。集団ヒステリーの一種だろう、と言う人もあったりして、奇々怪々でした。中には売薬の整腸剤1瓶まで請求した人もいて、世は様々だなあと思いました。