紅葉の仙台

東北大学で開催された中世文学会に、日帰りで出かけました。3年間通った東北新幹線ですが、はやぶさに乗れば仙台まではあっという間。男体山は見えましたが、宇都宮駅は懐かしむ暇もなく通り過ぎました。東北大学のキャンパスは紅葉が始まり、ひっそりと静かでした。足下には欅や栃の落葉と木の実が積もっています。校舎は新しくなったようでしたが、低層で、林の中にすっぽりと落ち着いていました。

研究発表は5本。中でも児島啓祐さんの「『愚管抄』の文体とその思想的背景」は聞き応えがありました。『愚管抄』が擬態語を「大和言葉の本体」と評価して、片仮名書きの文体を選んだ理由に疑問を抱き、その思想的根拠は密教の「浅略深秘」(初学に対しては平易な浅略によって、仏の教えの深秘に導くという教化の方法)であると説くもの。発表は極めて明晰で、完結しているように見えるのですが、でも、慈円は『愚管抄』を内典として著述したのでしょうか。擬態語は当時、説話や軍記物語には頻出しており、そういう文体を選んだのは、単に啓蒙手段としてだったのでしょうか。

愚管抄』の研究は未だ未だ一面的で、もっと多様な角度から試みられる必要があります。伝本や流布、読者対象や著述動機など、議論が盛んになって欲しい。軍記物語の方からは史料として利用するだけで、文学史的位置づけが不十分だと思われます。慈円の人物像も併せて、研究者が増えて欲しい分野です。

本日発売の軍記物語講座のブースを激励した後、発表者のご苦労さん会という名目で、後輩たちと一緒に郷土料理の店(でも私はホヤも牛タンも嫌いなので、結局美味しかった肴は、鮭のフリッターにイクラを載せた1品でした)に入り、乾杯しました。現職の間は、母校には遠慮があってこんなことはできなかったので、いろいろ我が儘を言いながら楽しく呑み、まっすぐ帰りました。