軍記物語講座刊行開始

軍記物語講座(全4巻 花鳥社)刊行開始

 第1回配本は『平和の世は来るかー太平記』です。14本の論文と「『太平記』西源院本・天正本・流布本記事対照表」を収めました。まえがき(小秋元段)には、ここ20年の研究史を踏まえて、各論考の要点が抽出されています。また本書の企画会議(小秋元段北村昌幸和田琢磨・松尾葦江)が版元の公式サイトに掲載されており、本シリーズ刊行の趣旨は本ブログにすでに書いておきました。

この20年間に戦後、太平記研究の活路を開いてきた方々ー加美宏、増田欣、鈴木登美惠、桜井好郎、杉本圭三郎、永積安明ーが次々に去って行かれました。文化政策や大学改革の影響もあって、人文学の間口は広くなったが、軍記物語本来の議論は浅く、軽くなりつつあるのではないかとの懸念を抱えながら、本シリーズの編集を始めたのですが、次々に寄せられてくる『太平記』論には、言いたくて堪らないことがいっぱい溜まっている、というパワーが溢れていました。

こうして見ると、先学たちの成果と想念はきちんと承け継がれ、批判を含みつつも発展的に推し進められています。そして今後20年の指針も、本書の中に潜められていると確信します。目次の詳細は花鳥社のHPでご覧ください。しおりには村上學「国文学研究が肉体労働であったころ」、石川透「軍記物語とその絵画化」などのコラムが載っています。装幀には、吉野金峰山寺の仁王門の威圧感と、遙かな隠岐の海とをデザインして貰いました。

引き続き第1巻『武者の世が始まる』の編集・校正が始まっています。これはまた第3巻とは変わって、1冊に多様な作品、多様な研究方法を盛り込んで、思考をあちこちに飛ばすきっかけを作ってくれる本になりそう。ご期待ください。