保元物語平治物語

軍記物語講座第1巻『武士の世が始まる』には、保元物語平治物語に関する論考も収載されますが、それに関連して昨冬開いた座談会の記録が、出版予告も兼ねて、花鳥社の公式サイトで公開されました。 https://kachosha.com/gunki2019051001/

講師は早川厚一清水由美子・谷口耕一の3人、いずれもこのところ、保元物語平治物語の注釈を、こつこつやっている方々です。早川さんは平家物語が御専門ですが、保元・平治物語にもはやくから発言しており、目下は源平盛衰記(共著)、四部合戦状本平家物語(共著)、源平闘諍録、そして保元物語の注釈を粘り強く続けています。清水さんは高山利弘さんとの共著で保元物語を、谷口さんは平治物語を、いずれも講談社学術文庫で出す予定だそうです。

当日は、皆さん熱意の籠もった研究報告をして下さったので、座談会というよりシンポジウムのようになりました。そこでウェブ上でも分かりやすいように、再構成してみました。諸本のことや時代性など、基本的な問題が専門的に議論されている(保元平治物語は、ある時期から研究が停滞し、若手研究者が少なくなって、こういう地点から見直しがいま必要な状況にある)ので、少々取っつきにくいかも知れませんが、講座本体にはこの先に、さらに活きのいい論文が並ぶことを期待して下さい。

軍記物語の多くは室町の文芸ではないか、とか、言葉には旬の時期がある、といった谷口さんの問題提起は重要だと思いますし、必ずしも従来注目されてこなかった伝本の本文校訂から取り組んでいる清水さんの作業も、注目されます。歴史学の成果と文学研究の両方に依拠して軍記物語を読む早川さんの姿勢から、何を学ぶか、それらが講座第1巻の内容にどう反映されるか、編者としては、はらはら・わくわく、という毎日です。