戦国武将逸話集

大津雄一さんと田口寛さん共著の『戦国武将逸話集』(1910~1918 全4冊 勉誠出版)が完結しました。岩波文庫の『常山紀談』を底本に、現代語訳し、解説(1~3は大津さん、4は田口さん)をつけています。『常山紀談』は岡山藩士湯浅常山(1708~81)が元文4年(1739)~明和4年(1767)にまとめた、戦国武将の逸話集25巻で、巻1第2話に、上杉謙信(照虎)や佐野城主天徳寺房綱が平曲を聴いた際の反応が記されていて有名ですが、全編に、日本人が何となく知っている、有名な武士の逸話が詰まっています。

巻末に主要事件・合戦略年表と主要人物索引がついています。解説は、1巻に『常山紀談』概説、2巻に戦国軍記の女性記事、3巻に新井白石など常山が理想とした諫臣について、4巻には版本『常山紀談』の構成について述べています。

戦国時代は、歴史読み物愛好者にとって見過ごせない挿話・逸話が多く、しばしばスピーチの枕にも使われ、ビジネスマンには人付き合いの有益なツールでもあるらしい。解説は、背後にある戦争の悲惨さに目を向けよ、と力説していますが、その渦中にいる時、人は悲惨とか不幸とかいった感覚ではなく、自分の居場所はどこにあるか、大切な人に何がしてやれるかを思うものではないでしょうか。それを後日形象化する際に、規範の枠でしか掬い取れないーそこにこそ文学の問題があります。