福島の桃

昨日の朝日新聞に、福島の桃農家にやって来た中高年男性が、東大大学院農学部教授の名刺を出し、宮内庁から皇室用の桃の選定を頼まれたと言って、70kgの桃を受け取り、その後「皇室献上桃生産地」と大書した木札と、「美智子さまの」大福餅なるものを送って寄越したという話が載っていました。2021年夏のことらしい。記者が裏を取ると、宮内庁も東大も該当者はいないとの返答だったと紙面にはあります。当人に都内で面会して問いただすと、あれこれ言い逃れをしたという。てっきり詐欺でしょう。

かつて桃は岡山産の水蜜桃が最高品、関東では日常用は山梨産でした。半世紀ぐらい前には福島の桃は赤い外観の割に果肉が硬く、美味しくありませんでした。八百屋でどこかのおばさんが、「こないだの福島の桃、大根みたいだったよ!」と言っているのを聞いて、うまいこと言うなあと思いましたが、近年、福島産も山梨産に遜色が無くなりました。以前はよく、路地に停めた軽トラが「産直大安売り」の掛け声と共に売っていたものです。詐取された桃もどこかの路地裏で、産直大安売りで売られ、その売り上げから木札と大福が、今後も継続して無料で仕入れられるよう届けられたのだと想像しました。

ところが、朝日デジタルには東大教授の話が書かれていない。一方、地元紙の報道では、東大客員教授の肩書や農家の地名も出ていて、当人は、宮内庁へは樹木緑化の関係で出入りしており、2021年から25年まで、大膳部から桃の選定を委嘱されたと語ったという。つまり植木屋が、得意先挨拶用の桃を無料で現地調達したということか?

注意点を2つー①本物の東大教授は滅多に名刺を出しません。傍で見ていて失礼じゃないかとはらはらするくらい、出しません。②皇室献上品のことは以前このブログに、「梨列車」という題で書きました。個人が依頼しに来たりすることは絶対にありません。