有朋

遠方から友人が上京したので、久しぶりにお喋りし、夜は近所の蕎麦屋兼呑み屋で呑みました。友人は30年前の教え子と昼食会をした帰りだそうで、私と話す間にも、彼女たちから繰り返し、楽しかったねメールが届いていました。

私との話は専ら、老老介護の体験談。私は還暦目前で90歳の父を看取り、その3年後、58歳の弟を見送りました。そこから得た教訓は筆舌に尽くしがたいものですが、96歳のお母さんの介護に当たっている友人からの質問に、いくつかは答えることができ、終末に向かっていく肉親のケアにどんな心構えが必要か、を多少はお話しすることができたかなと思います。

高齢化社会の現代では、多くの人々が誰かの看取りを体験するわけですが、病気や治療に関する基礎知識、医療スタッフや介助者との意思疎通、そしてさまざまの幸運があって初めて、納得のいく終末ケアが可能になるものらしい。数値や統計で決められるのではなく、個別の諸事情に叶った看取りが実現できることーそれは究極の、人間らしい共同作業だと思います。

母校の先輩から教えられた地元の呑み屋の片隅に2人で座り、種類は少ないが手料理らしい肴で出羽の酒を呑みました。淡路島の玉葱スライス、鶏皮炒め、アスパラガスの天麩羅、玉子焼、心太・・・地元客へのあしらいもほどほどで、料金も安い。入り組んだ露地の奥に夜だけ開いている店なので、教えられないと分かりません。壁に藤純子高倉健とモンローのピンナップが貼ってあるほかは、何の飾りもない店でした。