空港の鴉

前回、秋田で中世文学会が開かれたのは40年前でしょうか、未だ秋田新幹線はなかったので、飛行機で行きました。空港からタクシーで大学へ向かう途中、運転手から、鴉は頭のいい鳥だねえ、という話を聞かされました。

空港は造ったが1日に飛来する飛行機が少ないので、滑走路はいつも空いている。それで鴉が、上空から滑走路に胡桃の実を落とせば、簡単に殻を割ることができるのを覚えた。しかし胡桃の実は油が多いので、滑走路が滑りやすくなり、航空会社は困っている、という話です。

聞いた時は感心しましたが、その後、各県に1つ乃至は2つ空港が造られた時期に、この話はあちこちで聞かれるようになりました。胡桃の実でなく栗の毬や団栗だったこともありますが、胡桃の方が迫真性があります。一種の説話だったのでしょう。我らが田舎、を逆手に取った風刺譚(空港だけ造ったってどうすんだ、という中央行政への皮肉)です。

鳥取空港もかつては1日2便しかなく、昼間はよく、社名のない、胴体にオレンジ色のラインの入った航空機が飛んでいました。日航パイロットだった親族に聞くと、訓練機は赤やオレンジ色など目立つ色を塗るのだそうです。鴉はあまり見かけませんでしたが、すぐ近くに漁港があり、滑走路の先端は海上へ出ていて、鴎には迷惑だったかもしれません。