役者

日本酒の魅力を演じきった女優、というタイトルを贈るとしたら(ほかにも該当者はいるかもしれませんが)、松岡茉優。先日、訪問番組(勝手に他人の家に押しかける番組を、仮にこう呼んでおきます)で、獲れたての鮑の刺身を地元でご馳走になり、自分から地酒を所望して飲むシーンに、目が釘づけになりました。殆ど舌なめずりしながら酒を注ぎ、杯を空けるしぐさと表情で、鮑のうまさ、酒のうまさ、周囲の人々への親近感とその中にいる幸福感を一遍に表現し、しかも女優としても美しい。彼女の存在は、TVドラマ「銀二貫」以来、友人と共に「あのこ、いいね」と注目していたのですが、カンヌの賞よりもこのシーンが、印象に残りました。

男優にはいくらも酒好きがいるでしょうが、八代目中村芝翫(どうも、芝翫と言えば私には七代目の顔が浮かぶのですが、最近は、八代目を観ても橋之助という名がぴんと来なくなってきました)が利き酒をする観光番組の1シーンも、いかにも遊び慣れた男盛りの雰囲気が出ていて、酒が美味しそうに思えました。

昨日、富士霊園の売店で慌ただしく買ってきた「やま柿」という和菓子。おやつに食べてみたら、すぐれ物でした。干し柿を圧搾して小さな正方形に切っただけですが、切り口がミルフィーユ状態になっていて綺麗です。天然100%感があり、甘さも程よく、和紙の包装デザインもいい。たしか岐阜にも、同様の棹菓子がありましたが、こちらは1口サイズなのが新味。酒の肴になる!柔らかいチーズを添えてもいいかもしれません。吉祥文の小皿を選んで3片ほど載せ、ぬる燗で、仕事の合間にかるく一杯―すでに夜風は冷たくなり、そういう季節になりました。問題は、私の体力だけです。いい仕事をした日の御褒美に、と思って禁欲しよう。

追記:「やま柿」の包装には販売地しか書いてないのですが、本来越中の銘菓でした。