丸の内の夕暮

丸の内のレトロな会館で会議がありました。今年は審議材料が少なかったので、会議は早めに終わりましたが、一服しながら様々な情報を交換しました。メンバーはいずれも人文系の大学教授・名誉教授ですが、専門以外にも詳しい分野があり、さらにそれ以外に一流の趣味をお持ちの方々ばかりなので、話題は多岐にわたりました。

中でも感慨を籠めて語り合われたのは、自分たちより年上の世代の元気さ、そして今どきのネット社会の行方についてでした。90代で8時間踊り続けるダンス愛好家の話、一日の仕事が終わった後、研究室の全員を集めて軽食を摂りながら各人に指導を与え、その後カラオケへ行き、逐次帰って行く者を見送って麻雀を始め、しかし翌朝は1時限目から機嫌よく講義をしたという上司の話・・・あの世代はつよい。

ネット上に虚偽の情報をばらまかれても、削除するのは極めてむつかしい、流す方はかるい気持ちであっても影響は甚大なのに、小学校からプログラミングを学ぶ時代、親の力では、被害に遭っても与えても、防ぐことが難しくなるだろうという話。またゲームの世界での、虚実綯い交ぜのストーリーについて等々、呆然と立ちすくむような話題があれこれ出ました。ITはいわれのない万能感を与えるが、とっさにそれを否定するのは難しい、自分の身丈に合った言動をという指導は、一瞬ではできないのです。

人文学には何ができるのか、短絡的に「世の中の役に立つ」とは言わない方がいいかも、と考えながら、梅雨入り前のあかるい夕暮を帰りました。