春の草

花冷えというにはあまりに寒い昨日今日ですが、路傍には草が伸び始めました。「春の草」と言えば古典文学では死者を想う、あるいは死を忘れた生の虚しさをイメージするものになっています(白氏文集の詩句「化作路傍土 年々春草生」に拠る)。

青山墓地にお参りすると、さまざまな墓が目に入ります。郷土の木なのか杉林に囲まれた墓、格言が刻まれた墓石、一軒家が建てられそうな広大な墓、この時季に咲く花が1株だけ植えられている墓・・・中でも印象に残るのは、墓石を建てず地面に小石を積んだ塚があるだけの1画です。今頃は菫、もう少し経つと野苺の花が点々と咲いています。無縁墓ではありません。わざと野墓のようなたたずまいにしてあるらしい。やがて縁者がいなくなれば野に還るように(都営の霊園なので現実には売却されてしまいますが)。何だか羨ましい気持ちで毎年眺めて通ります。