守るのは

久しぶりに晴れたので、気分が前を向きました。洗濯物もふんわりと、温かく乾く。今年は秋晴れが殆どなかった気がします。遅い彼岸花が終わり、木犀は未だ香ってきません。ベランダでは、今頃ランタナが枝先一杯に蕾をつけ、日々草がもりもり咲いています。

バスに乗って播磨坂のスーパーへ出かけました。並木の水木はそろそろ紅葉し始めていて、葉陰には赤い実。軒先のプランターには観賞用胡椒が点々と赤い実を綴っています。やっぱり秋なんだなあと思い、寂しさに包まれました。秋の寂しさなのか、晩年の寂しさなのか、自分でも分かりません。雲も空も、真夏とは違って柔和なたたずまいです。

店頭には野菜が山積みになっていました。全体に高値のスーパーですが、思いがけず安い物もある。食生活に変化をつけたいので、そういう商品を物色しました。山葵の茎入りのタルタルソース、ドライフルーツ、トレビス、クレソン・・・渋皮入りの小さなモンブランを衝動買い、仏壇に上げてすぐ食べよう。今夜の食卓には鰺の刺身、茸入りの麻婆茄子、オニオンとポテトのサラダ。1週間分の朝食用に香りの高いライ麦パン、シナモン入りの葡萄パン、クロワッサンとバタール。

帰りのバスでは、小石川に住んでいた頃よく見かけた障碍者と乗り合わせました。向こうは覚えていないでしょうが、ああお変わりなくて何より、と、ついそんな気になりました。下校する小学生たちが、バスの外に向かって楽しそうに手を振っています。こんな、何でもない一日、それが幸せの本質です。誰にも侵されず、特別な決心や覚悟の要らない一日。守るなら、この日々を守って欲しい。

帰宅して荷をほどき、干し物を取り込んで、仏壇からモンブランを下ろしました。今年最後の麦茶と共に一服。