コロナな日々 42nd stage

時計屋にストップウオッチの電池入れ替えに行きました。20日に予定されている講演のタイムを計測するためです。以前TV出演していた頃に買った、細かなビスで蓋を留めてあって自分では電池が入れ替えできない型なのですが、もう「街の時計屋」が少なくなって、ここが閉めたら使えなくなってしまう。店頭には「店主高齢のためマスクをきちんとつけて下さい」という貼り紙が出ています。コロナ流行の際に、子供たちから引退を勧められたのだそうですが、用心しいしい続けるから、と言い張った由。すこし東北訛の残る店主で、巨大な振子時計が置いてあるのが自慢。

先客は腕時計を5本も持ち込んでいました。もう終わるから、店へ入って待っていてくれ、というので腰掛けて待つことにしました。話を聞いていると、どうやら保育士のような仕事をしている女性のようで、遠くから来て、永年溜まっていた懸案を一気に持ち込んだらしい。一番軽い、プラスチック仕様の時計を嵌めて帰りました。もう重い時計は仕事に障る、と言いながら。

ショーウィンドウには新品のほかに、小さな箱に仕分けた古い部品が並べてあり、歯車や竜頭や文字盤が結構美しく、見とれました。ちょうど5時になって、店の時計が1つずつ鳴り出しました。オルゴールの歌、低音の振子、小さな鉦などいろいろ。

話し好きの店主は鼻マスク、87歳。未だ目も見えるし手も震えないので仕事は続ける、桜木神社の秋祭に行列の先頭を歩いたらさすがに疲れた、と次第にマスクも外して絶好調。時間合わせをしていたストップウオッチをなかなか返してくれません。ここが閉めたら私も困るよ、頑張ってね、と言って店を出ました。電池の寿命は3年、店主は当分頑張ると言うのですが、私はその頃までストップウオッチを使う生活をしているかなあ。