選挙権

第2野党の代表の1人が、「零歳児にも選挙権を」と言い出していることを報道で知りました。また例のわるい冗談、と思ったら、真面目に論じる(賛同する)人がいると知って2度仰天。つまりは子供を沢山持つ(または17歳以下の人間を多数管理している)人の意思が選挙に濃く反映されるようにするという主張でしょうか。選挙権を18歳から持てるようにした時、自分の意思で社会制度に発言できる年齢についての議論はあったはずですが、少なくとも学齢期以前に認める根拠は出せないと思います。

「シルバー民主主義」などという語があることも初めて知りました。妄想するのは自由だと思いますが、政治家が制度改革案として提議するなら、社会全体を見渡し、少なくとも1世紀くらいの歴史を踏まえて、言うべきでは。

そもそも近年、政治家だけでなくマスコミも、高齢者が増えて若者が損している、といった視点を安易に強調する。評論家や一部の経済学者(?)も、そう言っておけば現代の論調に乗っているとでも思うのか、簡単に世代間の不平等を愚痴る傾向にあります。

ほんとにそうでしょうか。吉田徹さんという政治学者が、新聞紙上で物静かに説くコメントを読んで(朝日新聞朝刊8月3日付オピニオン欄「若者の声反映投票以外も」)、何だかほっとしました。社会の分断をことさら騒ぎ立て、高齢者を仮想敵に仕立てて若者に被害者意識を吹き込む、それが何の役に立つのか。政治が未発達な国でよくある、仮想敵を作って誰かの利益を保護する策略を連想してしまいます。

現在の高齢者たちは、さきの大戦後の苦しい時代に生い立ちました。それは自らの時代がそうだったから。なら、今の高齢化社会に生まれ、自らもやがてそういう社会で老いていく者たちは、未来に向けて何を為すべきか、よく考えて論じて欲しいと思います。