手嶋大侑さんから『日本の古代とは何か―最新研究でわかった奈良時代と平安時代の実像』(有富純也編 光文社新書)が送られてきたので、読んでみました。
編者の「はじめに」の後、1奈良時代の国家権力は誰の手にあったのか(十川陽一) 2藤原氏は権力者だったのか(黒須友里江) 3地方支配と郡司(磐下徹) 4変貌する国司(手嶋大侑) 5“「唐風文化」から「国風文化」へ”は成り立つのか(小塩慶)の論文が列び、最後に執筆者全員による座談会形式の「日本の古代とは何か?」という章が置かれています。
専門外ゆえ私は、まず4と5を読み、面白かったので、座談会を読みました。大抵こういう座談会は、内輪の頷き合いになってしまって、読む方は徒労感が多いものですが、これはちゃんと全冊の補足になっている。それで前半も読み、2にはいろいろ蒙を啓かれました。総じて、石母田正の日本史学界への影響力の大きさを、改めて思いました。本書の構成は中央と地方、という2本柱を立て、「画期」という語が屡々出て来るように、時代の変わり目、何が変化し変化をもたらしたのか、という視点で貫かれています。
4について手嶋さんからは【従来の一般向けの本では、税制・収取制度や負名体制などを中心に受領の地方支配が書かれる傾向がありましたが、本書では、私が研究してきた任用国司に多く言及するようにして、差別化を図ったつもりです。少し研究史整理の側面が強くなってしまいましたが、現在の教科書的記述につながる研究やそれを乗り越えようとする近年の研究を紹介できたのではないかと思っています。】とのメールが来ました。
全300頁強、新書なのでレイアウトも読みやすい。欲を言うと、図版の索引があったら役に立ったかも。