真田家の鷹狩り

平家物語巻1で「世のみだれそめける根本は」、平資盛の一行が鷹狩りの帰途、摂政藤原基房の行列に乱暴を働いたことからだと語られます。百合若大臣でも愛鷹が重要な役割を果たし、太田道灌が自らの素養の乏しさを知ったのも、鷹狩りの帰りでした。

二本松泰子さんの『真田家の鷹狩り』(三弥井書店)という本が出ました。二本松さんは、エネルギッシュな伝承文芸研究で知られた福田晃さんの弟子、立命館大学の院生時代から鷹書(鷹を使う狩猟のための諸事を記す書物)の研究を始め、本書は3冊目の単著です(①『中世鷹書の文化伝承』2011 ②『鷹書と鷹術流派の系譜』2018 いずれも三弥井書店)。2018年から長野県立大学に勤務、地元の旧家に伝わる資料を読み込み、現役の鷹匠と協同して放鷹の実演をも行なっています。

本書によれば、真田家家臣祢津信忠系(嫡流)のほかに、祢津光直(信忠の兄)系の鷹書があり、後者は実際に鷹を使ったかどうかは不明だが家の格を示す意図が見られ、前者とは異なる伝承を保持しているという。また加賀藩鷹匠世襲した依田家には祢津松鷂軒系の鷹書が伝わっており、それらと比較することによって信忠系・光直系の特性が鮮明になるというのです。二本松さんはすでに②から依田家資料を調査し始めていましたが、松代で2019年に開催した諏訪流放鷹をきっかけに祢津両家資料の調査も始めたとのこと。

読みにくい文書を読み込み、放鷹術の実際とも照らし合わせながら、従来の研究の誤りを訂していく膨大な作業には脱帽せざるを得ませんが、運も時宜もまた味方してくれたんだなあと感心しました。勿論、運を掴めるのも能力の一つ。なお門外の読者のために読みにくい文字にはルビを、また略系図を巻末に出して欲しかったと思います。

雲雀なんて小さな鳥、獲ってどうしたんだろうと調べたら、焼鳥は絶品だそう。