リモートのコミュニケーション

中尾文香さんと社会福祉学の片山優美子さん、グラフィックデザイナーの岩田直樹さんとが『思いやりオンラインコミュニケーション リモートワーク時代を乗り切る』(風間書房 2021)というブックレットを出しています。NPO法人ディーセントワーク・ラボ編、全110頁、イラスト満載。集団研修のテキストなどに向いています。

decent workとは、「人間らしい、働き甲斐のある仕事」という意味で、集団の中で人はどのような役割を持って生きていきたいか、との問いを抱えて、障碍者の職場改善を実践していく運動でよく使われる用語です。本書は働き手である障碍者と職場とが対話を通してさまざまな行き違い、無理解、矛盾をすり合わせ、折り合わせていくことが成功の秘訣だという経験から、コロナ下のリモートワークという新たな事態に対処するスキルの、より広い、一般的な応用を提案したものです。

1コミュニケーションの基本 2オンラインのコミュニケーション 3オンラインとオフラインの補完 付録オンラインワークショップ事例とツール という構成になっており、中でも第2章と付録が実用的です。精神論的な説教調でなく、できることの中に解決方法がある、という提案姿勢が親しみやすい。p87以下の「障碍者と共に働く」ための注意点、つまり、できることできないことの凸凹が激しい人と、それぞれの特性に合わせてチームの活動を組んでいくためのスキルは、あらゆる集団に活かすことができる、つまりはユニバーサルデザインなのではないでしょうか。小冊子ゆえに足りない部分は、ユーザー自身が補っていくことを前提に編まれた本だと思って読みました。

中尾さんは『明日へ翔ぶ 1』(2008)に「通常学級に在籍する障害のある子どもの母親と学校の視点のギャップ」を書いています。