疑問だらけの秋

防衛費の拡張分の財源は、国債に依らず税で、と財務省が言っている、というのは正しいと思います。ほっとする気分にさえなりました(防衛費を拡張することの善し悪しは脇に置いて、ですが)。赤字国債は無限に発行でき、紙幣をじゃんじゃん刷って、そのままいつまでもいけるような錯覚に陥っているのではないか、与党も国民も、と恐くなるこの頃だからです。

補正予算って、こんなに何度も、膨大な額で組むものなのか。何か声が上がる度に給付金や支援金を出すのが、善い政治と言えるのか。国民も、いつの間にか数字の大きさに不感症になりつつあるのなら、増税されて、実際に懐ろが痛む経験をした方がよい。自分たちが手にできるものは、結局、自分たちが働いて払う税金でまかなうのだ、と身にしみて理解することが必要です。

値上げの秋は店先でぎょっとするばかりか、自販機にも「企業努力の域を超え」云々の貼り紙があり、会計検査院の指摘やら五輪汚職やらの報道が続きます。物価が上がっても賃金が上がればいいのだ、と年末闘争で大幅な要求額を打ち出すところもあるようですが、景気の変化はもはや国内事情だけで決まらず、いつどこで、何がきっかけになるかわからないのだとしたら、今後何十年もの計算のもとになる基本給をどんどん上げていいのだろうか?人間1人のライフサイクルをカバーするだけの見通しを、誰が一体持てるのか。

出産一時金の財源を後期高齢者保険にも求める、という方針にも疑問が湧きます。後期高齢者保険を別枠にしたのは、ライフサイクルの場面ごとに制度を区分する考えに基づくものだったのではないか。収入のなくなる老後を安心して迎えられるような勤労人生が、政治の保証すべき「安心安全」だと思うのですが。素人には疑問だらけの秋です。