源平の人々に出会う旅 第67回「湯西川・平家落人伝説」

 全国に点在する平家落人伝説地の一つに湯西川温泉(栃木県日光市)があります。平家の忠臣肥後守貞能(重盛の子忠房とも、平高房とも)が、重盛の妹たちを連れて、この地に隠棲したと伝わっています(複数の説あり)。

【落人の里】
 落人達は、しばらく鶏頂山(同市)に隠れていましたが、男児出産の喜びで揚げた幟や鶏の鳴き声によって源氏に発見されてしまい、湯西川に落ち延びたとされます。そのため、現在も鯉のぼりを立てたり鶏を飼育する習慣が無いようです。また川治温泉近くの南平山には、落人の埋蔵金伝説もあります。


【高房神社】
 湯西川温泉は落人が発見したとされ、平家の末裔を名乗る温泉宿も複数あります。平高房という人物(歴史資料や『平家物語』には登場しない)については諸説があり、落人のリーダー格とも、忠房の子ともいわれています。


【平家塚】
 落人達は湯西川を安住の地とし、甲冑や刀剣をこの場所に埋めたと伝わります。記録では、肥後守貞能は源平合戦が終わる前に出家して一門から離れ(『玉葉』)、栃木県の宇都宮朝綱に身を寄せた(『吾妻鏡』)とあるので、それが伝承に影響しているのかもしれません。


〈交通〉
野岩鉄道会津鬼怒川線湯西川温泉駅
            (伊藤悦子)