夏祭

コロナで2年間中止になっていた祭が、今年は実施された、される、という話を多く聞きます。実際には第7波がやって来つつあるようですが、方針を決めた時期には見通せなかったのでしょう。京都祇園会、博多山笠が2年ぶりに行われ、東北のねぶたも実施予定とのこと。夏の祭には疫病退散や先祖霊を祀るいわれのあるものが多く、行事のこみ入った祭はあまり年が空くと、伝承が困難になるという事情もあります。

子供の頃は茅ヶ崎に住んでいたので、夏祭は、浜降祭という、早朝に神輿を海中へ担ぎ込んで浄める暴れ神輿の祭でした。父祖の地博多では櫛田神社の山笠が有名ですが、私は1度だけ、従兄に案内されて見物したことがあります。早朝だというのに(4:59に一番山が出発する)、蒸し暑い中の見物でした。男たちは舁き山と呼ばれる神輿の柄に短い縄を引っかけて担ぎます。締め込みにその縄を挟んだ後ろ姿の尻が粋なのです。舁き山の上に座った男が藁に赤い布を巻いた棒を持ち、疲れてきた担ぎ手を叩いて交代を命じますが、重い山を担いで全速力で走りながら交代するのですから、かなり危険です。沿道からは担ぎ手めがけて大量の水をぶっかけるのが、慣わしです。

叔母の話では、博多の男たちは1年中、翌年の山笠の準備に(と称して)集まっていたのだそうで、今日は何処へ行くとね?と訊いても、ちょっと打ち合わせ、という返事しか返ってこない(山の製作・保管場所は女人禁制でした)。しかし大体、居場所はわかっちょる、博多の店は女房で保っとうとよ、と言っていました。

津和野の弥栄神社の鷺舞を、文献調査で偶然行き合わせ、見物したことがあります。苦しいほど蒸し暑い日でした。行列の先頭には猿田彦が歩き、2羽の鷺が白い大きな羽を開いたり閉じたりする所作が印象的です。あれも疫病退散の祭でした。