ただ酒

食堂チェーンのことを書いたら、英吉利文学専門の知人からメールが来ました。

【大学近くの街道沿いには、チェーン店のレストランが並んでいました。大学院やゼミの学生たちとは折々に、その中のどこかに行くことが多かったです。学部の卒業論文、大学院修士論文の締め切り近くは、ゼミの後、皆で食事をしながら論文の進度や方向性のチェックをするのです。かつて師匠から、必ず少しは出させなさい、ただ飯、ただ酒を覚えさせないように、と言われておりましたので、半額程度助けてあげることにしていました。学費も生活費も自分で何とかしている学生がすくなくありませんでしたから、回数を重ねてとなると、一番安いサイゼリアということになります。】

国立大学は教員が学生に酒食を奢る習慣はなかったので、私立の大学院を担当した時、共同研究などのプロジェクトに院生を参加させた後食事をする際、少々面食らいました。毎晩のように教員持ちで呑みに行く研究室もある。それが不思議ではないらしい。

女子短大の教員をしていた人が奥さんに小遣いを請求するのに、学生に奢らなければならないからと言っていたら、奥さんが国立大学に社会人入学し、ゼミの呑み会に出たところ、きっちり割勘にして端数の¥3だけを指導教授が足したそうで、虚偽の申請だと責められた、という笑い話もありました。

しかし私は、学外者も含む懇親会などへ連れて行く時でも、院生には必ず、仮令¥1000でもいいから払いなさい、と教えました。酒食を毎回奢られていたら、それは貴方の子分になります、という意思表示だと見られても仕方がないぞ、と。

論文指導は口頭発表をゼミで議論するか、下書きを持ってこさせて添削するかにしていました。一緒に飲み食いするのは共同作業の後か、節目の行事だけ。今は国立大学でも、院生と会食しながら指導することが珍しくないようです。割勘でしょうね。