バウムクーヘン

美容院へ散髪に行ったら、あるじ(安くていい買い物をするのが自慢の人)が、正月3日には、息子の嫁の一家と神楽坂で会食をした、という話をしました。お互いにプレゼント持参で、彼は行きつけの紙屋で気に入ったメモ帳を見つけたので先にそれを買い、+αの品はバウムクーヘンにしたと言う。スマホで撮った写真を見せられましたが、なるほど可愛い表紙のメモ帳でした(美容師は画才が必要らしく、年齢に似合わぬメルヘンチックな図柄。但し先方は、バウムクーヘンに添えられたαと思ったでしょう)。

バウムクーヘンは孔が開いているから、見通しがいいし、年輪を重ねるという意味でも縁起がいい、年賀にはぴったりだった、と自慢するので、うーん、それは製造元に言ってやったら宣伝に使えて喜ばれるかもしれない、と言ってやりました。

バウムクーヘンは、本国のドイツよりも日本で人気が出た菓子だそうです。調べると第1次世界大戦の捕虜だったカール・ユーハイムという菓子職人が日本へ持ち込み、1919年3月4日に広島で披露されたのが日本でのお目見え、それゆえ3月4日はバウムクーヘンの日なんだそう(雛祭の翌日で、色とりどりのフランス菓子、マカロンの方が似合う気がしますが)。弊国で普及し始めたのは1960年代、とあって、思い当たりました。

学部時代、国文科は日葡辞書を引く必要があるので、第2外国語に仏蘭西語を履修することを勧められました。当時、ユーハイムバウムクーヘンがちょっと高級な菓子として出回り始め、couperという単語を習いたてだった私が同級生に、バウムは木、クーヘンは切り株という意味かなあ、と疑問符つきで話したところ、彼女は独逸語を習っている彼氏に向かって断定的にそう解説し、彼から菓子だよ、と言われ、そうそう、あのお菓子よ、貴方も知ってる?と珍妙な会話をしたそうです。