中世文学会2021秋季講演

中世文学会秋季大会の講演会を、オンラインで視聴しました。

三木雅博さんの「古典文学における<継子いじめ譚>の展開と漢土の文学」。日本の上代文学には継子いじめ譚はなく、10世紀後半の物語に見いだせるようになるが、それは貴族社会の家継承制度の変化によるとしました。そして漢土では、①漢族に伝わった(孝子伝に収録される)家の承継争いをめぐる話、②漢土以外から流入してきた(仏典由来)継子への横恋慕の話の2種があり、日本の男子を主人公とする継子いじめ譚もその流れの中にあるという。うっかりスピーカーの音量を絞ったままでしたが、分かりやすい話しぶりでした。思わず、近年の痛ましい虐待事件を思い浮かべながら聴きました。

千本英史さんの「『今昔物語集』はどう読まれたか」は膨大な情報を詰め込んだ、享受史でした。画面には作り込まれたスライドが出るはずなのに出ず、私はレジュメを別ウィンドウに出しながら聴いていたので、こちらの操作の誤りかとじたばたし、集中できませんでした。学会では後日の放映もするそうですが、修訂してから流して欲しい。『今昔物語集』には早くから仮名書きの写本もあるのだそうで、表記法と新旧判定とは必ずしも固定的に結びつかない例だと思いました。教えられるところの多い内容でした。

最後に臨時総会。学会名簿の管理や会費管理などの実務を外部に委託すること、そのために学会費を値上げ(但し院生は据え置き)することが提案され、承認されました。学会員がかなり減っていること、殊に院生は会員の6%(47名)しかいないという話は衝撃でした。全般に学会事務から親睦団体的要素を減らし、おもてなし的な慣行をなくしていくことが必要だと思っています。その上で、複数の学会を兼ねなければならない事情に鑑み合理化、簡素化を図り、会員を減らさない工夫をしていくべきだと考えます。