フレイル

最近、フレイルにならないために、とかフレイル予防、という表現をよく見かけます。おや、と思ったのは、以前聞いた使用法とは意味がややずれてきた気がするからです。もともとfrailtyという語を縮約した和製の造語です(虚弱と訳されることが多いようですが、老年学の用語なので、ずばり老衰と訳した方がよい)。

私が初めてフレイルという語を知ったのは、2017年春、臨床倫理学公開講座で、でした。健康な状態から瀕死までを9段階に分けた「老衰度」の意だと理解しました。その時の講師は、フレイル5(自力で食物摂取ができなくなる状態)になったら、一切の治療行為をやめるべきだ、と説き、反対するジャーナリズムをえせヒューマニズムだと断罪し、私は慄然としました。医療費軽減などには好都合かもしれないが、実際に大事な人を見送る時、そんな数値でぱちりと決められるわけではない。家族を相次いで看取ったばかりだったので、憤慨しました(後に彼女は、安楽死を容認する立場でTV出演し、対談相手からかなり強力に論破されたらしく、矛先が鈍りました)。

日本老年医学会の説明には「老年症候群」となっており、身体的・精神的・社会的の3側面があるとされ、政府の介護予防事業でもよく使われます。してみると、尺度の意味ではなく状態を指す語になったのでしょうね。我が家でも区から毎年1度、20項目+18項目の質問票が来ますが、その中の20項目がフレイル度認定用らしい。誤解を招くような質問が多いので(実際、未だ現役で働いていた時に、認知症の恐れあり、という判定の通知が来て慌てました)、最近は回答しないことにしています。

コロナは長引き、外出も交際も極限まで減り、全国的にフレイルが進まないわけがない。第5次感染爆発が来て年が明け、ようやく終息したとしても、ツケは大きいでしょう。