花不同

午後1でバスに乗りました。乗客の中年女性達は、バスの窓を開閉するにも手を袖で包み、吊り革を握った手はアルコール消毒しています。窓から見える播磨坂、母校の旧同窓会館、跡見女子大、桜は満開でした。窪町小学校が植えた若木も、それなりに爛漫。

終点で降り、南大塚の坂をゆっくり登りながら、花のトンネルを潜りました。もう老木なので(ケネディ暗殺の年にこの並木ができた)、あちこち大きく剪定されて曲がりくねった幹や根元からも花が咲き、不思議な光景です。杖を突いた老人やスマホを構えた若い人たちが往き来し、ビジネスマンも立ち止まってスマホ撮影。なるほど花の向こうにカラフルな車体の都電荒川線が通るのは、いかにも「映え」そう。今日あたり、日本中のSNSには桜花の映像が満載でしょうね。

例年、友人と居酒屋に入る時間帯を見計らって来ていたので、こんな真昼間に見ることは珍しい。学生時代、2年ばかりこの辺のアパートにいたのに、もうどこだか分からなくなりました。小さな時計屋だけは見覚えがありますが、勿論、代替わりしているでしょう。

スーパーで野菜を、花屋でロベリアの苗を買いました。最後に駅ビル内の惣菜屋で、健康に悪い物(つまり季節の酒肴)ばかり買いました。ビーフシチュー、フライドポテト、鶏肝の時雨煮、茄子の揚げ浸し、セロリと大根のサラダ、蚕豆。駅の広場にも、新しく植えられた桜が満開です。大木になるまで、見届けられるかしら。

帰宅してベランダに出たら、階下から吹き上げられた桜の花びらが点々と落ちています。拾ってきた花はもみくちゃになっていましたが、水を張った皿に浮かべました。料理に合わせて、いつもと違う皿小鉢を出しました。瞼の裏に焼き付けた繚乱の花を思い出しながら、今夜は仏壇とサシで呑むことにしましょうー桜も徐々に、代替わりしたよ、と。