雛の花

雛祭の花を買いに行きました。雛の節句の花は桃、菜の花、青麦の取り合わせが定番(70年前の日本の典型的田園風景です。子供の頃の東海道もそうでした)ですが、菜の花はぐんぐん伸びて姿が悪くなるし、花弁がちらかるので、我が家では桃に、ピンクの濃淡を取り合わせることにしています。

淡色のムシトリナデシコみたいな花があったので名前を訊くと、「桜小町」と言われました。生花業界でつけた名前らしい。一瞬、夜の街を連想しましたが、可愛いので買いました。根締めには大輪のラナンキュラスカーネーションを、と思っていたのですが、ピンクの花が少なくて、見当たりません。カトレアの切り花が沢山あるので、思い切って値段を訊いてみたら、1輪¥300と言われて拍子抜けし、2輪買って帰りました。春先はお祝いやお別れでカトレアが売れるのでしょうが、今年は売れ残っていたらしく、花屋が喜びました。

今年は大内塗の1対のほか、父が端材を削って作ってくれた小さな1対(戦後すぐで物が無かったのです。従姉たちの家には豪華な段飾りがありましたが)、それに京都で買った豆粒のような1対、岩井温泉で買った桜の小枝を削って作られた立雛1対などを出してあります。菱餅の代わりにミルク、抹茶、苺入りのチョコレートを重ね、あられの代わりに金平糖、白酒の代わりには白ワインを。

桃、桜小町、カトレアを活けてみたら、豪華な雛の部屋になりました。コロナの中、いつもと違う物に手を出してみるのもいいかもしれない、とちょっと得意になったのですが、一つ誤算がありました。カトレアは夜、濃艶な甘い香りを放つのです、噎せかえりそうなくらいに。夫婦雛たちの世界に、妖しい波乱が起こらなければいいけど。