受験

数年前、母校の女子大の前を通ったら、中年の男女があちこちの軒下になすこともなく佇んでいて、異様な雰囲気でした。何だろうと思ったらこの日は入試で、父兄たちが我が子の試験終了を待っていたのです。驚愕しました。

私の大学受験は共通一次以前でしたから、一発勝負です。当時は、医学部以外では女子が浪人して四大へ行くことは滅多になく、私としては背水の陣でした。男女共学の国立一期校を受験したかったのですが、試験科目の理科が2つ必要でした。高校の文系受験コースの理科は、率直に言って高水準ではなかったので、やむなく諦めました。

志望校受験の朝、別段のことはなく、ただ祖母が、朝食に鯊の佃煮を2匹つけてくれて、「首尾のあるものをと思ったけど、これしかなかったから」と言ったのを覚えています。1日目の国語古文は易しすぎて、却って不安でした。しかし苦手の数Ⅰが殆ど出来なかった(と思った)ので、もう駄目だと思い(私は数Ⅱが得意だった)、2日目は殆ど義務感で受けました。幸い合格しましたが、後日父に、2日目は行くのをやめようかと思った、と話したら、初めてと言っていいほど真剣に叱られました。何事も途中でやめるのがいちばんいけない、と。

不本意入学のその後については、勤務校の入学式記念公演で話したことがあります(今もウェブ上に録画が残っているらしい)。今年の受験生は、何かと不安が大きかったことと思います。しかし親が寒風の中で待っていたりしては、子にとっては重荷です。受験も入学も本人のことなのだから。そして今や、入試結果で全てが決まる時代ではありません。入学後の毎日で決まっていくのだし、その後も自分なりのオプションを足していくことが可能です。誰にもそれぞれに、いい結果を。