音楽療法史研究

『明日へ翔ぶ―人文社会学の新視点―』の編集担当者からメールを貰いました。第2集(風間書房 2011)に執筆した光平有希さんの名前を、心理学関係の雑誌で見つけました、というメールです。光平さんはエリザベト音楽大学出身で、音楽療法史が専門。『明日へ翔ぶ 2』には「楽器を用いた古代ギリシア音楽療法」という論文を寄稿しています。「臨床心理学」21:2にも執筆しているので調べたら、国際日本文化研究センター日文研)に勤めているらしい、とありました。思いがけない発見に喜んで、メールを呉れたようです。

ネットで見るとなるほど、総合大学院で学位を取得し、いまは日文研の特別研究員として活躍しているようでした。臨川書店から『「いやし」としての音楽―江戸期・明治期の日本音楽療法思想史―』(2018)という単著も出ていると分かりました。手許にないのでここで紹介することができませんが、いつかどこかで読んでみたいと思います。

松尾金藏記念奨学基金では、音楽は募集対象になっていませんが、光平さんの場合は、古代ギリシアまで遡って音楽療法の歴史や理念を研究していたので、審査の先生方も期待されたことと思います。指導教授を失って苦労した時期もあったようですが、ともかく大学院修了後の第一関門をみごとに越えてここまで来られたこと、私も嬉しい。

文系の大学院は修了後も10年近く生計が立たず、名刺に刷る肩書がない時期が続くのがごく普通。自分は何者か、何者になれるのか、苦しい時期です。でも誰も援けてくれないと思っているその時期、どこかで必ず、誰かが見ているものです。私もそうでした(その当時はそんな気休め、信じませんでしたが)。やがて脱け出した時、陰ながら喜んでくれている人たちが、必ずいるものです。