若大将

TVの歌番組で、「君といつまでも」を歌う、往年の「若大将」を視て、その老いに胸を衝かれました。CMでは未だ若さを保っている映像が流れているのですが、よく聞かされるように、80歳を超えるのは一つの節目なのだと実感しました。

幼年時代、彼の実家のすぐ裏に住んでいました。当時は勿論、彼の名は知られておらず、父親の上原謙がかつての美男俳優として有名で、私の祖母は、運動不足解消のためと称して時々、市中の映画館の飾り窓に出ている予告編の写真を観に行っていました。いろいろ艶聞も流れていて、夏の浜降祭(神輿を海中で洗う、暴れ神輿です)には、若い衆の担ぐ神輿が上原邸の門内へなだれ込むのが慣例になっていました。子供の私は、町内の回覧板を届ける役目でしたが、ブルドッグが数匹飼われ、いつも若い衆(当時は書生と言った)がごろごろしている家、という印象で、行きたくないお使いでした。

その後、友人の車で西湘バイパスをドライブした後、倒産したパシフィックホテルが、ホラー映画のような巨躯をさらしているのを見た記憶があります。「若大将」の愛称で爽やかイメージを売るスターは、幼年時代の湘南の記憶とは全く符合せず、いい歌を作る人だな、という共感は持ったものの、歌手というより政治家の顔立ちだと思いました。

調べてみたら、上原謙の一族は、平清盛の血統だということになっているのですね。池端姓が本名で、代々「清」の名乗りを継いできたという。尤も、かの若大将は、もう「清」名乗りを持ってはいないようです。

無論あちらは、おずおず回覧板を持って来た、小さな女の子のことなど知っているはずもない。私は彼の卒業後、同じ小学校へ入りましたが、5年次に東京へ転校しました。