共存社会

ノーベル賞受賞者山中伸弥さんが、使命感を以て開設したというHPを覗いてみました。https://www.covid19-yamanaka.com

一つ引っかかったのは、選抜高校野球が中止になったことを取り上げ、球児たちの潔さに涙が出そうになった、高校生だけの社会なら中止にはならない、感染症に抵抗力のない高齢者のために、という言い方をしていることです。そもそも高校生だけの社会というあり得ない想定から説き起こしていることに違和感を持ったのですが、あたかも高齢者のために高校球児が犠牲を払うかのような、誤解を呼びやすい、情緒的な表現は御免を蒙りたいと思います。

今回の新型ウィルスは、潜伏期間が長い、感染しても発病しない人が感染を広げる可能性がある、一旦感染しても免疫ができるのかどうか不明、という点が厄介です。そして国ごとに医療体制や衛生管理に大きな差があるにも拘わらず、人の往き来が国境を無きに等しくしている現状があります。

危ないのは、高齢者だけではない。免疫力の弱っている人、もっと分かりやすく言えば体力のない人は、感染すると重篤になる可能性がある、と言うのが正しいでしょう。そして我慢しているのは若者だけではない。各地の老人ホーム、慢性療養型病室の多くが、家族さえ面会禁止になりました。高齢者には残された時間は貴重です。中には何故家族が会いに来ないのか、得心できない人もいるでしょう。

今回の感染症があぶり出すのは、天災人災が地域限定でなく国際規模で、被災者が日常社会の中に入り交じって発生し、そこから波及する問題が多岐に亘るという状況を、果たして我々が克服できるか、という危機です。

鎮静に1年以上かかるというならなおさら、お互いに立場がいつ入れ替わるか分からない。それぞれができることを、真逆の立場を想像しながら続けていくことが必要になります。ゆくゆくはこのウィルスとも共存できる技術を、科学者は早く見つけて下さい。