おまえうまそうだな

九段の桜の開花宣言が出たのに、昨日は終日雪が降りました。鳥取在勤時代、「彼岸過ぎて七雪」という諺を教えられ、気がついてみると、東京も3月になって雪が降る例が結構多いことが分かりました。歌右衛門の亡くなった年、満開の桜に雪が降り、花吹雪と本物の雪とが空中を駆け巡って、これこそ名女形のための光景だと思ったものでした。

今年は暖冬だったそうで、たしかにガス代も電気代も例年より安く(去年、エアコンを交換したことも大きな理由)、年金生活にはたすかりました。今日、本郷通りを歩いていたら、モミジイチゴの白い花が咲いていて吃驚。本来、5月頃に咲き、梅雨時の木下闇に橙色のガラス細工のような実がなる(食べられます)灌木です。

我が家ではビオラとパンジーが色とりどりに咲き、石榴の赫い芽が出始めました。アリッサムの花に埋もれたブルーサルビアの古株からも新芽が出て、派手な色合いのジュリアンは、花手毬のようになりました。実生で育てた大島桜の芽が開き始め、どれかに1つでも花芽が包まれていることを期待して、毎日見守っています。室内ではピンクの胡蝶蘭が花をつけました。

去年知人から頂いた山椒の苗が新芽を伸ばし、つやつやと光っています。朝、戸を開ける度に、おまえうまそうだな、と思わず呟きたくなるのです。甘めの柔らかい梅干しの種を抜き、このくらいの稚芽を載せて叩いたら、日本酒の旬の肴として最上の一品。尤もこの木は未だ十数枚しか葉がないので、今年も防犯カメラを気にしながら、児童館の庭から失敬して来るしかなさそうです。毎日、うまそうだなという目で見られる山椒の木は、ストレス一杯かもしれません。