黄・白・青の少年

ブレイディみかこ『ぼくはイエローで、ホワイトで、ちょっとブルー』(2019 新潮社)を読みました。この人の本を読むのは初めてなのですが、作家でもありルポライター、そして幾分ジャーナリストでもあるなと思いました。奨めてくれた友人によると、作品によって文体は異なるとのことですが、ぐんぐん惹きつけられて2晩半徹してしまいました。

英国社会の一隅で、「世界の縮図のような日常を、思春期まっただ中の息子とパンクな母親(作者自身)とが、あれこれぶち当たりながら共に考え、悩み、乗り越えていく」(本書の帯から)物語。これも一種の私小説でしょうか。アイルランド人で長距離トラック運転手の父親と、保育施設で働く日本人の母親から体外受精で生まれた息子、という設定がすでに今日的です。上流社会ではない、(ふつうの)英国社会に一市民として生活する彼らが、はらはらさせられながらも痛快に見え、EU離脱や王室問題でよく分からない国だなあと思っていた英国が、リアルに感じられるようになります。

そして国や社会習慣が異なってはいても、ここで彼らがぶち当たる問題は、明日は日本の問題でもある。ダイバーシティ、なんて言われるとかっこよさそうだが、じつは自分自身の利害、偏見と日々格闘することなんですね。この作品に登場するのは、前向きで聡明な息子と、逃げずに彼と向き合う母。羨ましいと思うのは私だけではないでしょう。

思い出してみると、私たちの世代は小中学校までは貧富、能力、家族構成、さまざまな同級生がいました(戦死者の遺族もいたので)。だんだん標準家庭のイメージが決まってきて、それが苦しみを生み出しているのかもしれません。学齢期の子を持つすべての親、教育関係者に本書をお薦めします。