巴里便り

東洋史の平勢隆郎さんからメールが来ました。国内よりも中国滞在の方が長いような人ですが、巴里暮らしは初めてらしい。大酒飲みです。少し長い巴里便りですが、許諾を得て転載します。
[『平和の世は来るかー太平記』、頂きました。あらためて、日本はおもしろいと感じています。平和でない状況を書いた本、いいですね。 私の手がけた中国の春秋戦国時代は、戦乱の時代だといわれていますが、よく治まっていたと考えられていた周王朝の時代も、似たり寄ったりだったということ、思い出しています。記録がないから治まっていたように見えるという点で、史料事情は違っています。日本はわかっているのに、表現が違うということですね。
 実はいまパリです。東文研とパリの研究所との交流です。先方はやや面食らった感があるのが印象的です。これまで交流に来られた日本人と、雰囲気が違うんでしょうね。
研究所はサンジェルマン教会の近くで、宿舎はやや離れています。気さくな所長が案内してくれた教会は、入ってすぐ、日本の神社のような雰囲気を感じました。いいところです。宿舎の近くを散策してみるとサンマルタン門がありました。ルイ14世のときに建てられた凱旋門で、フランス革命にも関わる話があるようです。古い時代に建てられた宿舎は、「使い方次第で」快適です。何があっても驚かない、との精神を培ってくれた異国体験(私の場合、中国から始まりましたが)に感謝しています。
 内陸だから魚は高いんだということを忘れて頼んだサーモンは、おいしかったです。カルボナーラもおいしかったです。朝食べることにしている野菜サンドもいけます。フランスパンが必ずついてきます。外側は堅いけど中身は柔らかい。これもいけます。要するに何でもおいしく頂くので、参考にはならないかもしれません。この頃のことなのかどうかわかりませんが、コーヒーを食後に勧められます。カプチーノですね。ワインを飲んだ後だと、結構効きます。空港で普通のコーヒーを頼んだら(カプチーノかと訊かれたので、違うというと)、きょとんとされました。少しやりとりして、「あ、アメリカ―ノね」ということで事なきを得ました(日本のアメリカンとは違うんだが)。カプチーノが流行しているようですが、酒を飲まないイスラム教徒が多いことと関わるのでしょうか。物価は日本よりやや高めです。気遣いのこまかさは、日本に似ています。
 私は金をあまり持ってないように見えるようです。夜、何も言わずに席に座ったら、ワインとピーナツを持ってきてくれました。帰るときは「メルシーボク」。いい人たちです。](平勢隆郎)