父の日

父の日にネクタイを贈る娘は多いのではないでしょうか。我が家では、誕生日と父の日にはネクタイを贈ることになっていました。父の日には夏物のタイを選ぶのですが、稼働率が低いので、扇子にすることもありました。

それゆえ、男性に会うとまずネクタイを見る癖がついてしまいました。恩師の市古貞次先生は、いつも水色の、よく見るとちょっとずつ違う柄のものを締めておられたので、父にそう言うと、「あ、それがほんとのお洒落だよ」と言っていました。

我が家は非ブランド主義(無銘でもいいものを見つけるのが、目利き)だったので、価格に関係なくデザインと色で選んでいたのですが、ある年、安売り品の中に気に入ったものがあったので贈ったところ、だいぶ経ってから、締める時の手触りで値段がわかる、と言われてしまいました。

娘は、自分の父親には必ず、年齢より若向きのタイを選ぶものだそうです。緑色や茶色のものを選ぶと、背広に合わないと言って締めてくれないので、青や黒に赤い差し色のあるものをよく買いました。一緒に外出する際には、ちゃんとプレゼントしたものを締めてくれたのですが、ある時、彼の同僚が「随分若やかなタイを締めてますね」と冷やかし、父は「今日はアフリカの使節団と会ったから」と言い訳しました。以降、地味なものを選ぼうとしましたが、売り場の店員(若い男性)に実年齢を言うと鼠色のものばかり出して来るので、10歳若く言うことにしていました。

某強大国の大統領は、勝負どきには真っ赤なタイを締めます(たいへんわかりやすい)が、あれは娘が選んだのでしょうか。父が亡くなって17年経ち、もう男性の胸元を見る習慣はなくなりましたが、NHKのニュース・アナが、ときどきどうしようもなく野暮ったいのには閉口します。