献花

6年前に定年退職して、区の地域包括ケア推進委員会の高齢者枠に応募しました。2年間、地域福祉協議会にも出て、とてもいい勉強をしました。地域福祉というもの、行政サービスという仕組みはこういう風にできているのか、とまさに目から鱗でした。

その折、民生委員の1人からだったと思いますが、文京区には大人の引きこもりに対応する窓口がない、という発言があり、区は引きこもり対策は39歳までと回答しました。委員は心外だったようですが、私は40歳以降は生活保護か医療の面からアプローチするのだろう、と、発言の意義を理解しませんでした。

その後内閣府の調査もあり、40歳以降の引きこもり人数の多さ、今後親族が高齢化していくに伴う問題の深刻化が話題に上るようになり、文京区も40歳以降への対応を始めましたが、未だ未だ青少年問題、教育問題という観点が主であるように見えます。

ウェブで見ると斎藤環氏の活動など、さまざまな支援活動があるようです。ここ20年ほどの間に、臨床心理学の専門家もたくさん養成されたはず。この問題は、一家族で囲い込んでもいい結果にならないのではないでしょうか。

これからの日本外交を背負う人材や、初々しい少女の未来が奪われた事件は、いくら悲しんでもあまりある悲劇です。献花が祭壇のように盛り上がっている、その中に、でも、自殺した彼のための花もあると思いたい。義務教育を終わってから36年間も、社会と関わらずに生きてきた人がいたことは、それ自体が異常です。思い出して下さい、自分が15歳だった時のことを。独りで、世を渡って行けましたか?36年の歳月は今更取り返せない、自分が変われるかどうかも分からない、引きこもっていた巣が、まもなく無くなる日が来る―その絶望に関われなかった私たちからの、せめて1輪の献花を。