おみくじの歌を読む

『おみくじの歌』の著者平野多恵さんから、メールが来ました。昨日の本ブログに対するコメントです。

「おみくじの歌の分類について、本書では、さまざまなおみくじの中から特徴のある歌を取り上げた結果、古歌利用と教訓歌が多くなりました。ただ、流通している和歌みくじを見わたしますと、おみくじ専用の叙景歌・古歌利用(叙景歌・叙情歌とも)・教訓歌に三大別できそうです。今回は、業者製に多い、おみくじ専用の叙景歌はあまり取り上げませんでした。分類の仕方で見え方が違ってきますので、悩ましいところです。 

仮名遣いや漢字表記の問題は、かなり頭を悩ませたのですが、基本的には、各おみくじの表記に従いました。No20の第4句、No39の第5句、注記しておくべきだったと思いました。またおみくじや歌占の歌は、解釈に多様性をもたせるためか、曖昧なものが多いです。No48第2句、No35の初句の「なる」など、文法的にきっちり解釈しようとすると、骨の折れるものが多く、文法や仮名遣いの面で怪しいものが散見され、歴史をさかのぼって託宣歌を見ていっても、同様の傾向があります」(平野多恵)。

この本の凡例には「引用にあたっては、漢字をあてたり、送り仮名を補ったり、歴史的仮名遣いに統一するなどして」とあり、やはり注記があるべきでしょう。読者は、国文学の専門家が書いた本だと思って読むわけですから。

このシリーズが通常のアンソロジーとは異なる視角を打ち出そうとしていることは判りますが、統一型式にはめこむにはやや無理のある企画もあり、本書もその一つです。和歌を読む本なのか、時代の風俗の入れ物としての日本古来の韻文形式を考察するのか、または「おみくじの手引き」なのか、もっとユニークな本として作れたのでは。