羅馬のきのこ

英文学の多ヶ谷有子さんから、きのこの思い出を綴ったメールが来ました。栃木のご出身なので、乳茸、ハナイグチなどきのこには詳しいそうです。でもお子さんたちは、茸は宇宙人の食べ物だと言って、食べないとのこと。

【1年ほど住んだローマでは9月、10月ですと、ポルチーニヤマドリタケ)という茸を大笊に山盛にして売っています。干したものは日本でも手に入りやすいですが、生のものがおいしい。ローマにはサンブーカレモンチェロというリキュールがあって、食後酒によくいただいたものでしたが、日本人の口には合わないのでしょうか、ほとんど見ません。時々さみしいです。】うーん、美味しそうですね。

きのこは故郷を思い出させるのでしょうか、かつて名古屋の東山植物園に生えていたきのこを中国人の留学生が食べて、中毒死したことがありました。故郷でよく食べたきのこに似ていたのだそうです。やるせない望郷譚です。

鳥取にははやくからきのこの栽培工場があって(昭和天皇も見学に来られました)、アルバイトをした学生の話によると、作業は軽くていいが独特の匂いが服に染みついて困るそうです。根雨に信連屋敷跡を訪ねた時、行きも帰りも日本史の同僚と同じ列車に乗り合わせ(山陰本線は本数が少ないのです)、城跡の調査で山へ入って採ってきたから、と黄色いきのこの房を分けて貰いました。さっそくバタ炒めにして美味しく頂いたのですが、翌日、同僚から「うちでは、危険を分散するために、親と子供たちとは昨夜と今朝とに分けて食べた」(!)と言われて愕然。しかし名古屋に転勤後、スーパーで、栽培されたそのきのこが、タモギタケという名で売られているのを見つけました。

地方へ行くと、市場で、いろいろな種類のきのこをちょっとずつひろげて売っていることがあります。地元の人が採ってきたものを買い上げて、売っているのでしょう。そんな時、しみじみと旅の実感が涌きます。