きのこ狩り

今年はきのこの当たり年だそうで、山へ入って遭難する人が多いとか。長野の友人のメールによれば、死者は高齢者ばかりではなく、半端でない人数だそうです。山の恵みの豊かな所に育った人にとって、その季節に山菜採りやきのこ狩りへ出かけるのは、一種の本能のようなものらしい。

博多出身の我が家では、きのこのことは「なば」と呼びました(いかにも茸の感触が出ている方言だと思いませんか)。父は、あれは飢饉の時に食べるものだと言って、きのこ料理を作っても喜んでくれませんでした(博多は海の町なのです)。高校時代、化学の授業で、松茸の香りを薬品で合成したことがありました。爾来、インスタント食品の「松茸のお吸い物」等々は、化学製品のような気がします。

先日、中華レストランで「秋のランチコース」を食べたところ、松茸の入ったちまきが出ましたが、向こうが透けて見えそうなくらい薄くスライスして、餅米に貼り付けてありました。機械で切るのでしょうか、その技術には脱帽です。松茸は、網焼きが一番美味しく、炊き込み御飯と土瓶蒸しがその次で、フライも美味しい。子供の頃は手の届かない食材ではなかったので、年1度くらい出る、いま思えば贅沢なおかずでした。

チェルノブイリの事故の後、被曝被害が大きかったのは、森できのこ狩りをする習慣を止められなかったからだという話を聞いたことがあります。そこで生まれ育った人たちの気持ちを考えると、悲しい話です。