和歌文学会初日

渋谷の國學院大学で開催された、和歌文学会第64大会に出ました。まず図書館で特別展示を観ました。『古今集』2種、『千五百番歌合』、『拾遺集』、『後拾遺和歌抄』、『金葉和歌集』、『新古今和歌集』2種、「風葉集抜書」、「古今集切」2種が出ていました(10/16まで)。和歌の善本は文字がきれいなので、軍記の写本を見慣れている眼にはいい保養です。

午後から講演3本。最初は辻勝美さんの「鴨長明の旅と和歌」。中世近世を通じて長明は、歌人としてだけでなく東海道を上り下りした旅人としてイメージされていた、とのこと。次は豊島秀範さんの「物語中和歌の増減と表現の異同」。『狭衣物語』の諸本4種を比較しながら、和歌の異文や増減について例を挙げ、異同の要因を探る道筋をつけようとしたもの。源氏狭衣と並び称され、和歌に見るべきところがあるとされてきた『狭衣物語』で、なぜこのように和歌がゆれうごくのか、物語内の和歌の機能とは何か、については私も関心があります。

1本60分で3本、というのはやや重いプログラムだったので、3本目に私の番が回ってきた時は、聴衆はかなり疲労気味でした。覚一本平家物語の文体がなぜ感動的なのか、リズミカルだと感じられるのは何故か、多少冒険をしながらお話ししました。内容は来年の機関誌に書くように、とのことでしたが、55分の講演原稿と引用本文とを合わせて20枚、というのは難題です。来春の書き初めはこれで四苦八苦することになりそうです。

懇親会では麦酒片手に、日頃疎遠な人、しばらく会っていなかった人などと挨拶を交わし、重荷を下ろしました。今年の山の半分は、これで越えられたことになります。