太平記の勉強会

必要があって、『太平記』の勉強を始めました。いま最も元気な『太平記』研究者3人に集まって貰って、研究の現状と、15年先まで残せる『太平記』研究を考えるとしたら、というテーマで勉強会をしました。

いま歴史学の方では、南北朝内乱のあれこれについて、『太平記』の記述が正しくないとの指摘が目立ちますが、じつはそれらの論も、かなりの部分は『太平記』に拠っていて、一部分だけを拾い出して論じていること、神道や仏教などの思想的背景は『太平記』の場合、それほど特殊なものではないこと、『太平記』研究には表現論が不足していること、日本語学の方からもっと発言があってもいいのではないか、この20年ほどの間の物故者(『太平記』の偉大なる研究者が多い)に対する評価がそろそろあってもいいのでは等々のほかに、時代背景として、禅宗や宋元文化との関連も話題に上りました。

率直な意見交換が出来て、いい勉強になりました。同時に、うすうす私が感じていたことが、『太平記』研究の最前線の人たちの発言から裏付けられる例も少なくなく、自分の研究者感覚に自信が持てました。本日の勉強会の核心部分は、できれば遠からぬうちに、ウェブ上で公開したいと考えています。

暮れてゆく市ヶ谷の街で、麦酒片手に、さらに範囲を広げてお喋りしました。近頃の出版文化について、2040年までの大学教育、殊に文学系の教育の未来、女性学長の誕生秘話・・・地下鉄へ向かって歩き出すと、湿った木の葉の匂いが外堀の土手から立ちのぼってきました。