お伽草子と説話

説話文学会9月例会のシンポジウム「お伽草子と説話」を、聞きに行きました。永年この分野をやってきた德田和夫さんの、定年記念を兼ねたような企画で、盛会でした。岩崎雅彦さんの司会も上手でしたし、近年話の長くなった德田さんも今日は、ほぼぴったりの時間を守り、スムースな進行でした。

基調講演「お伽草子の説話/説話のお伽草子」は、広義のお伽草子(420種あるという)について、題材と形態のあり方のさまざまを例を挙げて分類し、その引例の蓄積には感嘆せざるをえませんでしたが、分類基準とその脈絡が、いまいちよく分かりませんでした。パネラーの報告は以下の通り。

伊藤慎吾さんの「玉藻前と犬追物起源譚」は,エンターテイメントであるはずの物語に、知識を保存・開示する役割が背負わされるようになり、お伽草子玉藻前』はその好例だと説くもの。ケラー・キンブローさんの発表「お伽草子『二十四孝』と渋皮清右衛門の女訓書」は、当時の女性は女訓書を読んで、何を学んだのかを考察しようとしたもの。ロベルタ・ストリッポリさんは自分で撮影した各地の写真を公開しながら、「『平家物語』の女性説話とお伽草子・能・民間伝承」と題して、芸能や物語から現代もなお「文化遺跡」が生まれていることを話しました。山本陽子さん「つなぐ霞」は、奈良絵本のすやり霞の役割を解析した発表でした。

久しぶりの学会だったので、挨拶しても急には反応が返ってこない相手もありましたが、私の方は活力が戻ってきたような気がしました。德田さん架蔵の資料展示も素晴らしいものでした。高田馬場で、20年前の教え子とよもやまの話をしながら呑んで帰りました。