統計学

若い頃非常勤先で知り合った、専門や出身大学の異なる方々との、講師室の休憩時間の談話は、いま思うと貴重でした。もうどこでお会いしたか忘れてしまいましたが、大きな私大(法学部が有名)の統計学の先生と知り合いになったことがあります。全国を吹き荒れた学園紛争が収まった後のことです。

アンケートというものは、例えば太陽は東から出るか、という設問であっても、必ず何パーセントかはNOとする回答があるもので、数値は統計上の処理を施して初めて使い物になる、という話を聞いたのが印象に残っています。

あるとき、大学の採用人事が母校出身者に偏りがちなのは問題だという話が出ました。その先生は一呼吸置いて、こう言われました―でも、あの紛争の時、大学を建て直したのは母校出身の若い教員たちだった、母校へ戻るともうよそへは移れない、ここをよくするしかない、という彼等の覚悟のおかげで、いまの◯◯大学があるのです。

しみじみとした口調でした。いま反則スポーツで騒動になっている大学にも、母校出身の教職員がいるはずです。ネット上で大学名が叩かれ、現役の学生から、自分たちは関係ないのに、と抗議するツイッターもありますが、半世紀前の大学紛争時代に最も尊敬され、「闘争」と呼ばれるのに値するとされたのは、あの大学の全共闘でした。自分たちの言葉で闘争宣言を書き、自分たちの身の丈に合った要求と交渉を繰り広げようとした、と私たちの世代には記憶されています。