リルケの薔薇

今年最後の薔薇が咲きました。園芸の専門家ならこの時期の蕾は切り落としてしまうようですが、我が家では12月29日がR・M・リルケの命日なのにちなみ、リルケの薔薇と呼んで、咲かせることにしています。

リルケは薔薇を愛し、自邸の薔薇園の手入れ中に棘で傷つき、破傷風になって亡くなったと言われています。薔薇賛歌ともいうべき詩も残しています。青年時代、親の本棚で見つけた大山定一訳の『マルテの手記』を読み、忽ちその文体に引き込まれました。詩集を買って、大学ノートにペンで書き写したりもしました。それゆえ1年の最後に咲く1輪は格別にいとおしい。

宇都宮大学には学生食堂の前に薔薇の木があって、この時期、寒さで半ば黒ずんだ、赤い大きな蕾が幾つも切り落とされていました。可哀想なので拾ってきて、研究室で灰皿に活けました。室内でも寒いため、半開にはなりますが完全には開きません。ゼミ生たちは、うちの先生はいろんな物を拾ってくる、と笑っていました。樹木の多いキャンパスでは、桜の実や夏椿の実、篠懸の実や栃の実、紅葉した落ち葉など、卓上の飾りにいいものが季節ごとに目につくからです。

我が家の薔薇にはこんな時季に、葉をレース状態にしてしまう微小な青虫がつきます。けなげではありますが、潰します。