和菓子屋

文京区が観光開発のために、区ゆかりの文豪にちなんだ新しい和菓子を作らせました。急な来客があって、近所の和菓子屋へお茶受けを買いに行き、樋口一葉にちなんだ「おぼろ月」と森鴎外にちなんだ「雁」を買って来ました。味は普通の和菓子(前者は麩菓子、後者は練り切り)ですが、解説する分、茶呑み話の種になるので。もう一種、「漱石」というのもあって、求肥にピーナツの粒を練り込んだものがありますが(漱石が落花生好きだったことにちなむ)、昔の駄菓子のようなものです。

お金を払いながら、オリジナルの製品ですかと訊いたところ、「和菓子はみんな、店ごとの創作だ」と言われました。定番の菓子に見えても、それぞれ店独自の工夫があるのだそうです。職人の意地のようなものが言葉の端々ににじんでいたので、むつかしくなる前に早々に退散しました。