現場事情

東京出張のついでに、と言って鳥取から教え子がやってきました。今や50代半ばの高校教諭です。鳥取県警はいまたいへんだね、という話から始まり、この冬は雪が多そうだということ、駅前の政治家の銅像のこと、豪華列車の停車駅のこと、かつてのゼミ生の消息、大学改革後設置された新学部の存在意義から、現在の高校現場の諸事情、村上春樹論、伝承文芸の方法、文学と政治の関係等々、いろいろお喋りをしました。

鳥取もずいぶん変わったろう、と言ったら、いや基本的に30年前とあまり変わりません、との答え。旧ゼミ生のその後の家族構成も詳しく把握しており、TVニュースは相撲巡業の懇親会会場を決して映さないがおよそどこの店かは分かっている、とのことで、街の規模や人の非流動性からくる濃密さはたしかに昔のままのようです。

久しぶりで高校現場では何をどう指導しているのか、何が問題になっているのかを聞き、時世の変化を痛感しました。変化の大きな原因にはITの発展と普及が関わっている気がします。人間が等身大でなくなり、新しい情報を過信しているのではないか。時代の変化に適応した対策が立てられた為に、じつは問題の解決からは遠ざかっている場合もあるのではないか―あれこれ考えることは多いのですが。

真面目なタイプなので胃潰瘍を何度も経験したそうですが、「医者に訊いたら、食道炎は日本酒を呑んでもかまわないそうですので」と言って、日置桜を手土産に持って来てくれました。青谷の酒です。ともかく仏壇に上げましたが、早速、肴にはあれとあれがある、と冷蔵庫の中身が頭に浮かんできました。