雪支度

北国の公園では植木の雪吊りが始まっているでしょう。鳥取では市内を流れる千代川に白鳥が飛来する頃、道路脇には山のように袋が積まれ、赤白だんだらの細いポールが立ちました。道路工事が始まるわけでもないのに何だろう?と思ったら、除雪車が雪に埋もれた植え込みを削ってしまわないための目印と融雪剤に使う塩の袋でした。

豪雪地帯の新潟などは街路の真ん中に放水設備があり、新幹線の線路でも、関ヶ原の付近ではこの時期放水設備の試運転が行われ、線路上に噴水が出現したような不思議な光景を見ることがあります。

世田谷に住んでいた時、両隣が福岡出身と北海道出身の人でしたが、雪掻きの流儀が違うのです。朝早く積もった分だけ掻く人と、前の晩から掻いておかないと明日困る、と夜遅く掻く人。一番厄介なのが自分の通る時だけ湯を撒く人。やがて凍ってとんでもなく危険になります。

鳥取の雪は水分が多く、おろし大根の中を歩いているような感覚で、バスのステップが高いため積雪の中へ降りるときには、ちょっと勇気が要りました。鳥取へ赴任して初めて雪が積もった日、キャンパスの除雪車が珍しくて見物に行き、学生に笑われました。困るのはセンター試験の日です。前日、受験生が5人以上通りそうな道路は、地方自治体の予算で雪掻きをします。鳥取全県で延べ1500km。監督に行く方も、通常15分で行く所を2時間以上かかる。私も、来ないバスをぼーっと待っていたら、通りがかりの車が拾ってくれ、ようやく間に合ったことがありました。南北に長い日本列島で、この季節、同時一斉というのがいかに難題か、東京にいると分かりません。

そして春が来て雪が解けると、横断歩道が無くなっている。スノータイヤが白線を削ってしまったのです。