慰霊祭

学部時代の母校の同窓会が主催する慰霊祭に、初めて出ました。卒業生の中には戦争未亡人や単身で亡くなる人も多いため、年1度、同窓会館で、母校の教官や卒業生の物故者を送る会が行われるのです。太平記研究の鈴木登美恵さんが昨年8月に亡くなったので、お別れに行きました。壇上には物故者名簿と白やピンクの花が飾られ、女声合唱とピアノ演奏の中、参列者1人1人が献花をしました。

最後に遺族たちから、101歳で亡くなる間際まで数学の難問の解き方を家族に教えていたとか、NHKで初めて管理職になったアナウンサーだったとか、敬意を籠めた思い出が語られたのですが、役員のみならず参列者たちが一斉に、熱心にメモをとり続けたのには吃驚、まるで学会会場のようでした。

鈴木登美恵さんは戦後の太平記研究、殊に諸本分類を確定されたことが大きな業績ですが、論文の殆どは30代、定時制高校教師をしながら書かれたもので、後年の40年ほどは書かずに男性研究者たちを配下に置かれていました。学位論文を、と随分お勧めしましたがついにお書きになりませんでした。しかし以前、長坂成行さんが、著作集は俺が出すと宣言していましたから、まもなくお仕事の全貌を見ることができるでしょう。

小石川の通りには冷たい小雨が降って、ハナミズキの並木の紅葉が始まっていました。