鬼瓦

樋口一葉が通ったという風呂屋「菊水湯」は3年前に廃業、代替わりの後継者がいなかったらしい。銭湯の経営はけっこう重労働なのでしょう。跡地には低層ながらマンションが建ち、屋根の鬼瓦だけが塀際に飾ってあります。お向かいの菊坂には一葉が通った質屋があり、土曜の昼間に一般公開されています。一葉が使ったといわれる井戸は個人の住宅の傍にあるため、観光客がうるさいと案内板が外されましたが、今も区指定の災害用井戸になっています。

行きつけの医院がこの近くなので、転倒して怪我をし診察を待つ間、区内の銭湯の噂をしました。大黒湯は未だやってる、富士の湯は閉めた等々。そう言う私は、大学2年で級友9人と奥の細道一周旅行をした時、初めて銭湯を体験。それまでは自宅の風呂に入ったことしかなかったので、公衆浴場の作法を級友の1人から教えられ、お湯は飛ばさずにかぶれ、と叱られました。

そう言えば老舗の和菓子屋藤村も、永らく仕出しだけはやっていたようですが、とうとう廃業しました。院生時代に同期4人で連れ立って行き、田舎汁粉、都汁粉、田舎善哉、都善哉、どう違うのか食べ比べしたものでした。